竹工芸 雑記帳

清風籠難航す。大型受注!!

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網代にしては野趣のある風情に惚れて作り始めた清風籠。

普通っていうか、私の通っている教室では竹の表面にある蠟分の被覆幕を削り落とし、節の部分も削って平らにし、完成後こげ茶や黒などに染色するっていう(所謂「黒物」ね)手法を取るんですが、この籠は節部分も、表面の被覆膜も残したままで、染めずに完成としてあります。

これですけど、意に反して難航しています。

底の面は4角形ですが。底を起こして側面を編み上げていくとき、自然に円形になって行き、上部では完全な円形に収まります。写真でもそうなってるのがわかりますよね。

左が教科書。真ん中が底から8段目ぐらいで止まってしまった自作品です。なんで苦労してるかっていうと、四角な面を円に近づけて行くためには少しづつ周囲の距離を短くする(つまり少しづつ締め込んでいく)必要があるんですが、締め込もうとするとひごが上に逃げようとして落ち着いてくれないんです。逃がさない様に針金で止めたり、テープで止めたりするんですが、なかなか上手くいかないんです。3本の横ひごを廻すのに3時間かかったりしたんで、ちょっと小休止。12~3本まで進めればあとは何とかなりそうなんですが、そこまでしつこく気力を保っていく自信がなかったもんで、何とかうまくできる方法を考えようっていう寸法です。

右がその成果。型を作ってしまいました。全体が5つのパーツで構成してあり、それをアリ溝と蟻桟で連結してあります。 型を抜くときはアリ桟を抜いてから型板を取り出します。

こんな感じですね。 アリ溝と桟の密着度が悪く、木工作品としては完全な失敗作ですが、なあに、編む時は胴回りをテープで固定しておけば良いんで、これで何とかなるでしょう。

なんでこんなことをしているかっていうと、籃胎漆器の箱を作りたいからです。 3月に高松の美術館で籃胎キンマの大家(故人)の特別展があって、そこで流していたビデオ(古いねえ)で、型を使う編み方の秘密がわかったからなんです。型を使うことは前からわかってたんですが、その使い方と編み方の関係が解ったんです。

内容は複雑なので言いませんが、まさに目からうろこって感じでした。いや、だからってできるっていう訳じゃあ無いのも解ってますよ、もちろん。 研鑽あるのみです。

ところで、タイトルの最後の部分、何のことって思ったでしょ。

先日6年ほど前に納品した大型の作業テーブル兼食卓テーブルを見た人から製作依頼があったので、打ち合わせに行ってきました。

自宅を改装して2世帯住宅にする。建物は鉄筋コンクリート造りで40数年前に建てられた3階建てで、1階部分は車庫、2階3階を住居にして2階に施主と長男、3階に次男夫婦が住む。

延べ床面積は居住部だけで430平米っていう、とんでもない広い家です。

これがそのテーブルです。2000X1000X735っていう。規格外の大きさのテーブルで、立ち作業に使う事を想定してテーブル面の高さを決めてあるので、食卓テーブルとして使うために椅子の座面高を430mmとし、妻手下部の桟に長手方向に足置きの桟を2本渡してあります。

この足置きがいたくお気に入りの様で、「こんな楽なテーブルに初めて座った。ついては製作を依頼したい。完成は来年の4月なので、その頃の納期で。」「親戚や知人が集まって食事することが多いので、大きさもこのテーブルみたいに大きいのが良い。」との事。

少し前から気づいてはいたんですが、このテーブル、とりわけ女性と小柄な男性に評判が良いんです。

市販の食卓テーブルは高さ700が標準で、椅子の座面は400~420が相場です。この高さだと身長175センチぐらいでないと座った時かかとが床に届かないので、足元が不安定で、座面と腿の裏側が当たってしまい、腿の裏側が圧迫されるので長時間座るのは苦しいんです。 足置きの高さは床から11センチにしてあるので、違和感を感じずに座っていられるって事でしょう。

施主の身長は155センチ前後、このテーブルが気に入ったのも頷けます。

多分、世の中の女性の大多数が永年苦しめられてきたんだと思います。そういえば、たまに椅子の上に正座して食事してる女性を見かけますが、こういう事が一因だったんじゃないかしら。

打ち合わせの時同席していた次男君「僕たちも食卓テーブルは欲しい。もう少し小さくて4人掛けで良いです。少し余裕のサイズが良いかな。」

「椅子は2階の大きい方に6脚、3階の小さい方に4脚で合計10脚お願いします。そうすれば2階に大人数が集まった時に使えるから。」

「そういう事だと2階のテーブル高と3階のテーブル高を合わせて置かないとダメなんですけど、そういう事で良いですか?」

「良いです良いです。僕たちも座ってて違和感ありませんから。」

ということで、900X2000X735 と 900X1600X735のテーブル2台、椅子10脚が決定。

「あの、それと、玄関に置いてあるベンチですけど、ああいうのも欲しいです。」

「え?あのベンチ?あれは見た目より格段に手間が掛かるんで高くなりますよ。もっと簡単な作りにすれば相応の値段で出来ますけど。」

「・・・・・・・・・・・」

「やっぱ、あのデザインが良いですか?」

「はい、あれが良いです。高くても良いですからお願いします。」

それから半月ほどたって、簡単な図面が出来たので再度打ち合わせ。

「かくかくしかじか、値段は概ねこの程度。材はブラックチェリーで行きましょう。」

「全てお任せします。玄関ベンチの方は?」

「あ、それは引き渡しが済んでからにさせてください。壁面内寸ぴったりにしたいですから。」

「それとですねえ、テレビは壁掛けにするんですが、その下に置く横長のキャビネットもお願いできませんか。」

「いや、有難い事ですが、それも引き渡し後でよければお受けします。」

次男の奥さん。「ワタシ、収納が全て既製品の組み込みタイプであまり好きじゃないんですけど、一部でも良いから何とかなりませんかねえ。」

「いや、それはですねえ、施工業者は一括で下請けの家具工場に発注するんで、部分的に僕がやってもその分安くなるわけじゃあないんで、その分だけ高くつく可能性が大きいですよ。ハードネゴって方法もありますが、出来ますか?(なるべく受けたくない感満載って感じ)」

脇で聞いていた次男の叔母ギミ。「ほら、**ちゃん(次男夫婦の赤ちゃん)も半年過ぎたんだから、赤ちゃん用の食事椅子も作って貰いなさいよ。それは私からのお祝いって事でプレゼントするから。但し、これは急ぎますよ。10月中には納品してやってくださいませ。材はそうねえ、テーブルと合わせてやってくださいな。」

この人の発言には逆らえない威厳と押しつけがましさがあって、否応もなく受注。

この先何度か打ち合わせの機会があるんですが、その都度受注が増えそうで怖いです。

てなわけで10月後半ぐらいからボチボチ木取りを始めて行き、年内に椅子10脚を完成、年明けからテーブルに掛かって1~3月はフル回転って事になりそうです。

その間は漆も竹も殆ど手が廻らないので、教室は11月から休まんといかんなア・・・・って思ってたら、MDK君が仕事持ち込み。知り合いの花屋さんの陳列什器を作るんで手伝え(やれ)って依頼です。この忙しい時につまらんものを割り込ませるなって思いましたが、弟子の依頼とあっては是非もなし・・・・・はあ~~~~~。

よっしゃ~ガンバルド~~~。

 

 

 

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