木工制作

2度目の箪笥修理

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去年の暮れに納品した箪笥を見た人から、「私のも修理して欲しい」っていう依頼が舞い込んで来ました。

覚えてますか?これはほぼ全面改修っていうか、換骨奪胎レベルの修繕で随分苦労させられたんですが、おかげで新しい注文を呼び込んでくれたって訳です。

今回のは引き出しの上部が欠けているもので、息子さんたちが子供の頃引き出しに乗って遊んでいたので欠けてしまったとのことで、「直るものなら直してほしい。簡単な修理で良いから。」っていう依頼でした。この引き出しは右上部が欠けています。

欠けた部分を接着剤でくっつけてあったようですが、すぐに剥がれたと見受けられます。

逆側から見るとこんな感じ。亀裂は更に中央部に向かって伸びています。

別の引き出しは右から中央にかけて長い亀裂が入っています。

大小合わせて8杯の内、実に7杯に何らかの欠けや亀裂が見受けられます。それも全て上部の切り欠き部分の故障です。

28mm厚の楢材(ホワイトオーク)の前板なんですが、前板上部を12mm程の厚みを残して切り欠いてあり、本体の框に当たるようになっており、引き出しのストッパーとして機能させようという意図だったと思えます。

前板は板目材ですが、当然のことながら端に行くにしたがって板目から追い柾、柾と変化していきます。その部分を引き出しを閉めるたびに框に当てる訳ですからヒビが入って割れてしまうのは当然のことでしょう。

つまりこの箪笥は設計ミスです。

小引き出しの焼き印を見て納得。街で老舗の高級家具店として有名だった店の製品です。ほら、いつか登場した考えられない作りのウインザーチェアを作った店ですよ。

40数年前、私がまだ若かった頃、街の小金持ちたちが有難がって「高級家具店」としてもてはやした店ですが、高級そうな駄家具モドキを高く売る店に過ぎなかったって事です。

先ずは金具を全て取り外してから切り欠き部分を鉋で削ります。墨は前端から13mmの位置に打ってあり、この線の手前まで手押しで削っておき、最後に鉋で墨線ぴったりまで削り込みます。

下に見えているのが削り終わったものです。

削った面に13mmのホワイトオークの板を張り付けるんですが、これは随分考えさせられました。接着剤で貼るだけでは同じように框に当たった衝撃で割れるか剥がれるかする可能性が捨てきれません。採用したのは、本体と貼り付ける板の上下に2本の溝を掘り、雇い核を入れる方法です。

貼り付け中。雇い核が飛び出しています。あとでカットして整形します。

整形後です。サネが見えていますが、塗装すれば目立たなくなるでしょう。

こんな感じになりました。

前板周辺は4分の瓢箪面が取ってあったんですが、好きじゃないのでシンプルな角面にしました。案の定右上の引き出しが削り過ぎになってしまいました。ルーターの深さをセットするストッパーの位置を間違えてしまった結果です。だからルーターは嫌いなんだよね。

ただ単に下手くそ、または粗忽とも言いますけれども・・・。

この引き出しはやり直しです。グスン。

8杯の配置はこうなってました。

塗装を済ませて納品待ちです。塗ってあった塗料は赤味掛かった茶色のニスですが、似た色の塗料が見つけられなかったので、墨汁を水で薄めたものと柿渋を混ぜたものを下塗りし、その上からブラウン(ウオルナット色となっていたが薄茶ぐらいの色調)の水性ウレタン塗料を塗りました。

納品の時、「まあ、新品みたい。これなら本体も塗り直して貰えばよかった。」っておっしゃたんですが、謹んでご辞退させていただきました。

ジャカジャン!

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